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隠れた病気がないか調べるために魚鱗線は保湿に加えて受診もしよう

カテゴリー:コラム

2021年9月11日


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魚鱗癬は皮膚が固くなっていく病気(角化症)の一つです。魚鱗癬の主な症状は乾燥と鱗屑(フケのようなもの)です。魚鱗癬に対する治療の基本は保湿(症状を緩和する対処療法)です。魚鱗癬は基本的に遺伝によって生じる病気ですが、必ずしも遺伝によらない(後天的な)原因によって魚鱗癬症状が起こる場合もあります。

こんにちは。院長です。
カナクリニックは自由診療のみのクリニックですが、皮膚科として開業している関係で様々な問い合わせをいただきます。
特にアトピー性皮膚炎や乾燥肌の方からの相談が多い印象を持っています。
(実際の所としては、保険診療を行っている他の皮膚科クリニックを紹介しています。)
今回は乾燥の症状のなかでも、皮膚が固くなる【角化症】、特に魚鱗癬についてお話できればと思います。

そもそも魚鱗癬って何?

そもそも【魚鱗癬】という病気をご存じない方も多いかもしれません。
簡単に言うと皮膚の角質が作られたり、剥がれ落ちたりするプロセスに何らかの異常が生じた状態です。
魚鱗癬の患者さんは全身の皮膚が乾燥してキメが荒くなり、フケのような皮膚がめくれて落ちていく状態になります。

この状態が魚の鱗のように見えることから「魚鱗癬」と名付けられました。魚鱗癬の多くは先天的な異常を原因として発生しますが希に後天的にこの症状を呈する場合があります。後天的な要因による魚鱗癬では内臓腫瘍を合併することがあります。
魚鱗癬は、原因の遺伝子や臨床症状、罹患部位によって10種類以上に分類されています。*1

ここでは、代表的なものについてお話しましょう。

一番多いのは尋常性魚鱗癬

【尋常性魚鱗癬】は魚鱗癬の中で最も多くて、比較的軽症です。
家族歴が有って出生時は無症状ですが乳幼児期に発症し四肢の伸側や背中の皮膚が乾燥して、細かな鱗屑を伴い手のひらのシワが深くて目立つという状態です。
症状は湿気の多い夏場に軽くなり、乾燥しやすい冬に悪化します。希にかゆみを伴いますが、自覚がない事が多いです。

保湿成分のフィラグリンの遺伝子異常が原因

さて、尋常性魚鱗癬はフィラグリンの遺伝子異常によって発生します。*3,4

フィラグリンの役割

フィラグリンは皮膚最外層である角層を構成するタンパク質です。
ケラチンという繊維を束ねることで角層のバリアを強固にする機能を持っています。
フィラグリンがアミノ酸へと分解されると天然保湿因子(NMF)になるので皮膚の保湿に関わっています。
※アミノ酸がいくつも結合したものをタンパク質と呼びます。

潤ったきめ細かい肌をキープするためには、フィラグリンが正常に機能することが大切です。
通常であれば皮膚の角層の下の顆粒層というところでケラトヒアリン顆粒と呼ばれる顆粒が見られます。ケラトヒアリン顆粒の主な内容物はフィラグリンが10~12個つながったタンパク質であるプロフィラグリンです。プロフィラグリンが角層に移動するまでにフィラグリンに分解されてケラチンと凝集・結合して行きます。

尋常性魚鱗癬の患者の場合プロフィラグリンの産生が低下してケラトヒアリン顆粒の形成不全が起こります。そのため、顆粒層が薄くなったり、消失したりします。
そして、フィラグリンが減少しているために天然保湿因子も減少し皮膚のバリア機能が低下します。そのため、乾燥して荒れた肌になります。

遺伝形式の都合で症状が軽度ですむ

フィラグリン遺伝子は常染色体半優性遺伝(不完全優性遺伝)と呼ばれる遺伝形式を取ります。
ちょっとむずかしいワードなので正確ではないですが、わかりやすくざっくりと解説すると人間は父親と母親からそれぞれ1セットずつ遺伝情報(ゲノム)を受け取って合計2セットずつのゲノムを持っています。
このことは、細胞がどちらの遺伝子を読み取って遺伝情報を発現させるか?というときに、2つの選択肢があることになります。2つの内一方に異常が有れば症状が出るものを優性遺伝両方に異常がないと症状が出ないものを劣性遺伝といいます。

DNA

優性遺伝の内

両方に異常がある(ホモ接合体)ものに比べて片方にのみ異常が有る(ヘテロ接合体)のほうが症状が軽度であるようなものを半優性遺伝(不完全優性遺伝)といいます。
常染色体とは、正常な人間に46個有る遺伝子の内性染色体(X,Y遺伝子)以外のものを指します。
そして、なにか特殊な事情がない限りは片方の遺伝情報が発現する確率は50%です。体には無数の細胞が有るのでイメージ的には
父親由来の遺伝情報を発現させた細胞が50%
母親由来の遺伝情報を発現させた細胞が50%
あります。

仮にAさんという患者を想定し、Aさんの父親由来の遺伝情報には異常があり全くフィラグリンを作ることができないAさんの母親由来の遺伝情報には異常がなくフィラグリンを作る能力が100有ると仮定し、さらに体全体でフィラグリンを作る能力が60未満だと魚鱗癬を発症すると想定してみましょう。
するとAさんの体のフィラグリンを作る能力は50%です。フィラグリンは存在していますが、機能するために十分量ではないから魚鱗癬になってしまいます。こういったことが起こっていると考えてください。

軽度の魚鱗癬は治る:対処療法によるコントロール

先述のように、尋常性魚鱗癬はフィラグリン遺伝子の異常で発生します。遺伝子異常が病気の原因であるため、完全に一発で治す!という治療法は存在しません。
とはいえ、症状は10歳くらいまでは進行しますが青年期以降は軽快することが多いため、対症療法が基本の治療となります。*2
保湿剤、サリチル酸ワセリン、活性化ビタミンD3外用を行うことと乾燥を防ぐために部屋の湿度を保ったり入浴時に皮脂を落としすぎないことが重要とされています。

出生時から症状が有る魚鱗癬

出生時から症状があるタイプの魚鱗癬もあります。
これらは、症状が重く、難病指定を受けています。皮膚のバリアが崩れた状態になっているので水分が蒸発しすぎて脱水になったり細菌やウイルスに感染して赤ちゃんの時期に亡くなることもあります。
全国で100~300人くらいの患者さんが居ると考えられています。常染色体の遺伝子が関与しているので、男女はほぼ同数と言われています。

表皮融解性魚鱗癬

出生時から全身の皮膚が赤くなり、水疱とただれがある魚鱗癬です。ケラチン1,2,10の遺伝子異常が原因とされています。
遺伝形式は、【常染色体優性遺伝】です。出生〜乳幼児期は水疱が多く学童期からは過角化(皮膚が固くなること)が主な症状になっていきます。

先天性魚鱗癬様紅皮症

水疱形成がない表皮融解性魚鱗癬と考えていただければと思います。
トランスグルタミナーゼ1, 脂質輸送タンパク(ABCA12)、リポキシゲナーゼ(ALOXE3, ALOX12B)、マグネシウム輸送タンパク(NIPAL4)、酸化酵素(CYP4F22)などの遺伝子が原因とされています。
上記2つの治療は、尋常性魚鱗癬と同じく保湿、サリチル酸ワセリン、活性化ビタミンD3の外用を行うことに加えてレチノイド内服を行います。

道化師様魚鱗癬

特に重症なものに、道化師様魚鱗癬というものがあります。
胎児のときから皮膚の表面の角層が非常に厚くなり出生時には全身が厚い板状の角質に覆われ、亀裂を生じます。先天性魚鱗癬様紅皮症の一部と同じく脂質輸送タンパクのABCA12に異常が見られるのが原因です。皮膚表面のバリア機能にとって重要な脂質が分泌されず表皮細胞の中に脂質がたまりその結果皮膚のバリア機能傷害と厚い角質を生じます。

治療は新生児期全身に対しては、輸液、呼吸管理、正常体温の維持をして、皮膚の感染のコントロール等を行うのが主体です。皮膚には、保湿剤やワセリン等の外用を行います。
比較的近年までは、脱水、感染症、呼吸困難などで生後数日以内に死亡する重篤な病気でしたが最近は生存率が向上しています。出生前診断の適応がありますので事前に胎児に異常が有ると分かれば出生後の処置を考えることができます。

他臓器の異常を伴う場合もある

先天異常がある場合

表皮融解性魚鱗癬や先天性魚鱗癬様紅皮症、道化師様魚鱗癬などは皮膚の症状がメインですが、原因遺伝子によっては、その他の臓器の異常を併発する場合があります。
比較的頻度が高いとされているものを表で挙げます。

※横スクロールできます

病名 遺伝形式 皮疹 他臓器の異常 原因遺伝子
Netherton(ネザートン)症候群 常・劣 ●魚鱗癬様紅皮症
●屈折線状魚鱗癬
●アトピー素因
●毛髪異常
(結節性裂毛,陥入性裂毛)
SPINK5
Sjögren-Larsson
(シェーグレン ラルソン)症候群
●魚鱗癬様紅皮症 ●精神発達遅滞 
●痙性四肢麻痺
ALDH3A2
Dorfman-Chanarin
(ドルフマン シャナリン)症候群
●魚鱗癬様紅皮症 ●中性脂肪代謝異常
(白血球内の脂肪滴、脂肪肝)
●白内障 ●神経異常
ABHD5
Refsum(レフサム)症候群 ●尋常性魚鱗癬様の皮膚 ●網膜色素変性(夜盲) 
●多発性神経炎
●小脳性運動失調 
●感音性難聴
PHYT PEX7
KID症候群 常・優 ●魚鱗癬様紅皮症 ●角膜炎 ●感音性難聴 GJB2
Conradi-Hünermann-Happle
(コンラディ ヒューネルマン ハップル)
症候群
X・優 ●魚鱗癬様紅皮症 ●骨格異常 ●白内障 
●四肢麻痺
EBP

他の病気に関連して起こる場合

関連性や原因がわかっておらず、論理的には説明したり思いついたりするのが難しいですが内臓の病変が皮膚症状も引き起こす場合があります。
そういった症候群をデルマドロームといいます。

こういったものは【知らないとわからない】ものです。皮膚科領域では「後天性魚鱗癬」と呼ばれ多くは先天的に発症する魚鱗癬が、後天的に発症することから名付けられています。悪性リンパ腫が潜んでいる可能性があるとされています。速やかに受診するとともに、ご自身の懸念も伝えましょう。

まとめ

・魚鱗癬は皮膚の乾燥と鱗屑(フケのような皮膚)を症状とする病気
・尋常性魚鱗癬が最も多く、自然に軽快していく
・治療の基本は対症療法
・他の臓器の異常を伴う場合がある


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