もしや壊血病?
ビタミン不足による壊血病症状から
早く回復する方法

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壊血病はビタミンC不足が原因です。コラーゲンの合成が低下し血管壁や毛組織が脆弱になります。このため出血を引き起こしやすくなる怖い病気です。現代でも極端な偏食や食事制限で発生する可能性はありますが、ビタミンCの補充で治療できます。

現代は飽食の時代と言われていますね。
そんな中、栄養失調の患者さんが居るなんて信じられない方も少なくないでしょう。
もちろん、高齢で食事を摂ることが難しい方が栄養失調になることはあるでしょう。
実は、若い人でも何らかの原因でビタミンやミネラルが不足したため
カロリーは十分なのにその他必要なものが足りない!という可能性もあります。

日本におけるビタミン欠乏症で特に有名な話として、ビタミンB1不足による脚気があります。
白米だけ食べていたらビタミンB1が不足して、心不全で亡くなった人が沢山いたというものです。
日本では地名度が高くありませんが、実はビタミンC不足による病気もあります。
今回は、日本では少し知名度が低いビタミンC欠乏について扱っていきましょう。

ビタミンCの役割

ビタミンCはサプリメントの袋に記載されているところを皆さん一度はご覧になったことがあると思います。
実は、ビタミンCには体の中で重要な働きがあり
・コラーゲンの合成
・ノルアドレナリンの合成
・鉄吸収の促進
・胆汁酸(脂質の吸収やコレステロール代謝の調整を行う)の合成
など体内で非常に重要な物質です。

コラーゲンの合成に関わる

ビタミンCの特に重要な働きとして、コラーゲンの合成があります。ビタミンCは、体内のタンパク質を構成するアミノ酸の一つヒドロキシプロリンの合成に必須です。
ビタミンC不足によってヒドロキシプロリンが無くなると、組織間をつなぐコラーゲンや象牙質、骨の生成と維持に影響が出ます。

人体は合成できないが、ある程度
蓄えがある

ビタミンCは生きていくために必須ですが、私たち人間は自力では賄えません。
実は人間にはそういった物質がいくつもあります。
例えばミネラルは鉱物ですから、どう考えても人間には作れません。
また必須アミノ酸と呼ばれるタンパク質のもとになるアミノ酸もそうです。
ビタミンは【生物の体内で十分な量を合成できない炭水化物、タンパク質、脂質以外の有機化合物の総称】です。
私たち人間にとってアスコルビン酸(ビタミンC)はビタミンですが
正直殆どの生物にとってはビタミンではありません。
実は、多くの哺乳類はブドウ糖からビタミンCを合成できます。

人間はビタミンCを作れないと申し上げましたが、ビタミンCはある程度人体に蓄えがあります。完全にない状態は防ぎたいですからね。
そのため、ビタミンCの摂取をストップしたら即欠乏症の症状が出るわけではありません。安心してください。
健康な人体には、だいたい900~1500mgのビタミンCが存在しています。
そのストック量が500mgを切ると様々な症状が現れ始めると言われています。

壊血病の症状

ビタミンC欠乏症(壊血病)では下記の症状が発生すると言われています。 皮膚や粘膜、歯肉の出血およびそれに伴う歯の脱落、変化 毛包性の過角化、螺旋状毛髪、毛包周囲の出血(出血を伴う毛包角化症) 創傷治癒の遅れ。 低色素性の貧血。
(鉄分不足が原因で、赤血球の数が減る。さらに赤血球の中に含まれるヘモグロビンという赤い色素量が減少する。)
感染への抵抗力の減少。 古傷が開く、末期になると骨折して治った骨もはがれる。 ただし、健康状態がいい人が【ビタミンCの量が500mgを切る】までには時間がかかります。実際には3~12ヶ月に及ぶ長期間の高度なビタミンC欠乏状態が続かないと欠乏症は起こりません。
しかし現代の日本でも稀に症例報告が上がりますので、そういう意味では注意深く読んでくださると幸いです。

症状が出る順番と壊血病を疑う時

たくさんの症状があると、極端な話
【私は血液検査の結果で低色素性の貧血を指摘されたから、壊血病かもしれない!】
と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。いきなり重度な症状から現れるのはどんな疾患でも稀で、順番があります。
・壊血病の場合、最初の症状は疲労と倦怠感から始まります。
・1~3ヶ月程度ビタミンCが不足すると、貧血、筋肉痛、下肢を中心とした点状出血・毛嚢周囲の出血斑(毛穴に一致した出血斑)ができます。
→最初にみられうる疲労や倦怠感だと、考えられる原因がたくさんあるため、壊血病を一番には疑いません。しかし上記の症状が、野菜や果物を摂取しない極端な偏食の人で見られた際には、壊血病を疑い始めます。 ・更にビタミンC不足が持続すると、全身浮腫、黄疸、溶血、自然出血、痙攣、発熱などの症状が出てきます。*1,2 →この段階まで来ると、皮膚科の教科書に乗りそうなほど典型的な症状が出るため、まず間違いなく診断が付きます。 という流れです。

壊血病になりやすいパターン

ビタミンCが不足するのはどういう場合か考えてみましょう。
ビタミンCは不安定な物質であるため、食材を刻んで空気に触れさせたり、加熱調理したりすると大量に失われます。
そういったものしか摂取していない状況が続くと、ビタミンC欠乏の傾向がでてきます。
有名な話としては、大航海時代の長距離航海する船の船員が、数ヶ月以上の養生生活を強いられたために上陸して新鮮な食料を入手できなくて壊血病が蔓延したというものがあります。

大航海時代の帆船

現代における主なリスクとしては以下のようなものが挙げられています。*1,3,4,5
・野菜やフルーツの摂取不足
・社会的弱者
・アルコール依存
・重度の精神疾患
・食物アレルギーによる食事制限
国内では、透析患者で長期の食事制限を行った場合で発症した例や、2年間カップラーメンと卵とご飯のみで過ごした若年者での発症の報告があります。*6,7
…流石に症例報告に上がるくらいのことなので信じがたい生活パターンの人が挙げられますが、いわゆる「偏食」の人でも発生しうるということでご理解いただければと思います。

壊血病の診断

問診を十分に行うことで
・野菜やフルーツの摂取不足など、ビタミンCの欠乏が発生しやすい偏食が有ること
・出血斑などの身体所見
といった情報の有無から総合的に判断します。

より客観的な検査としては、血液検査を行いビタミンC濃度が低下(2μg/ml以下)していると診断が確定的になります。*8,9

注意するべき他の病気

出血傾向や皮膚の角化(固くなること)を伴うので、ITPやTTPなどの各種血液疾患や悪性腫瘍、膠原病やビタミンD,K不足、抗血小板薬や抗凝固薬などのいわゆる血液をサラサラにする薬などを使用していないか注意する必要があります。*10
そして、壊血病になるレベルで偏食の方は、葉酸やビタミンBや各種ミネラルも不足している可能性が高いので、それらの不足の有無も要確認です。

壊血病の治療

壊血病の治療方法は確立していません。
たとえば ビタミンCを毎日300mg投与する。*8 ビタミンCを3~5日間1gずつ投与した後、最低1週間300~500mg投与を継続する。*9 ビタミンCを2~3日間1~2g投与した後、1週間500mgを継続、その後1~3ヶ月間100mgを継続。*1 などがあります。
いずれの場合でも、少なくとも毎日300mg以上のビタミンCの投与が必要とされています。
これにより、症状はだいたい数日から数週間ですみやかに改善するとされています。*9

通常はビタミン過剰は起こらない

よく聞く表現【レモン1個分のビタミンC】とは、【20mg相当量のビタミンC】という意味です。

レモン

壊血病の治療では数日間1~2gも投与することもあります。これはレモン100個分相当のビタミンCを摂取することになります。
厚生労働省は、成人のビタミンC推奨摂取量は一日あたり100mgとしています。*11

ところで、健康な人体には900~1500mgのビタミンCが含まれているのに、いくら病気だからといって毎日1~2gもビタミンCを摂取したら過剰状態になって逆に悪い影響が有るのでは?
と感じた方もいるかも知れません。
結論から言うと「過剰な心配は不要」です。
まず摂取したビタミンC全てが吸収されるわけではありません。そして血漿濃度が高くなりすぎると、尿中に排泄されます。
ヒトでは経口摂取した量が30mgから180mgでは70~80% が吸収され1.5gでは 50%が吸収される3gで飽和するとの報告があります。

尿を介してビタミンCが排泄される仕組みは巧妙です。
ビタミンCの摂取量が少ないときは、ビタミンCを排泄せずに腎臓で再吸収します。
ビタミンCの血漿濃度が1.4mg/dL以上の場合だけ、再吸収が低下して過剰な量が尿中に移行します。
この仕組のおかげで過剰な状態にならないですし、ビタミンCの摂取量が不足した場合も欠乏も送らせることができます。*12

まとめ

・ビタミンCは抗酸化物質なだけではなく、様々な代謝に関与している
・ビタミンCを人間は合成できないから外部から取り入れるしかない
・しかしながら、ある程度の蓄えがある
・長期のビタミンC欠乏で、コラーゲンの合成ができず出血傾向が出る場合がある(壊血病)
・ビタミンCの摂取で速やかに回復する
・症状だけで診断するのが難しいので、偏食や食事制限などの病歴があれば医師に伝えるのが大事
・ビタミンCが過剰になることはない

参考文献

*1
Daniel Léger, Scurvy: reemergence of nutritional deficiencies, Can Fam Physician . 2008 Oct;54(10):1403-6.

*2
F W Leung, P A Guze, Adult scurvy, Ann Emerg Med . 1981 Dec;10(12):652-5. doi: 10.1016/s0196-0644(81)80092-3

*3
Jesse M Olmedo, et.al., Scurvy: a disease almost forgotten, Int J Dermatol . 2006 Aug;45(8):909-13. doi: 10.1111/j.1365-4632.2006.02844.x.

*4
Regina H De Luna, et.al., Scurvy: an often forgotten cause of bleeding, Am J Hematol . 2003 Sep;74(1):85-7. doi: 10.1002/ajh.10354

*5
A Des Roches, et.al.,Food allergy as a new risk factor for scurvy, Allergy . 2006 Dec;61(12):1487-8. doi: 10.1111/j.1398-9995.2006.01200.x

*6
荒金 和美ら, 肺胞出血を伴った壊血病の一例, 日呼吸会誌, 40(12): 941-944, 2002

*7
吉野鉄大ら, 極端な偏食により湿性脚気, 大球性貧血, 壊血病を呈した1症例, 綜合臨牀 58(10): 2189-2191, 2009.

*8
J V Hirschmann, et.al. Adult scurvy, J Am Acad Dermatol . 1999 Dec;41(6):895-906; quiz 907-10. doi: 10.1016/s0190-9622(99)70244-6.

*9
R Stephen, et.al. Scurvy identified in the emergency department: a case report, J Emerg Med . 2001 Oct;21(3):235-7. doi: 10.1016/s0736-4679(01)00377-8.

*10
Laura Pimentel, Scurvy: historical review and current diagnostic approach, Am J Emerg Med . 2003 Jul;21(4):328-32. doi: 10.1016/s0735-6757(03)00083-4.

*11
「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

*12
Oreopoulos DG, et.al. Renal excretion of ascorbic acid: effect of age and sex”, Journal of the American College of Nutrition 12 (5): 537–542. doi:10.1080/07315724.1993.10718349